愛知県が全県立高校にスタディサプリを導入しただけでは学習の遅れを取り戻せない理由

愛知県教育委員会が6月よりリクルート社のスタディサプリを全県立高校に導入するという報道がありました。

愛知県の全高校生が今年度(来年の3月まで)は無料で使えるという契約です。

元々は「受験サプリ」という名前で始まったサービスですが、今はスタディサプリという名前に変わりました。

ちなみにスタディサプリ小中学校版もあります。

僕自身は、今回のスタディサプリ導入には大いに賛成です。GIGAスクール構想の補助金の使い道としても全然アリだと思います。

GIGAスクール構想というのは、2020年現在文部科学省が進めている1人1台コンピュータ端末を利用した学習環境の整備をはじめとする次世代の教育ビジョンです。これを進めるための補助金が用意されているわけです。補助金に関する詳しい資料はこちらです。

「GIGAスクール構想の実現」に関する補助事業の概要について のPDFファイル

ただ、ただね、スタディサプリだけでは足りないなって考えています。今回は、何故スタディサプリだけでは学びの環境として不十分なのかをお話します。

学びを支える環境としてはスタディサプリだけでは不十分

以前、スタディサプリの営業さんから体験講習会を受けたことがあります。実際にテストアカウントも頂いて、動画の視聴を試させてもらいました。

あくまで登録されているのは5教科であり、国数英理社だけだったんですよ。一部、英検対策や簿記対策、自己啓発系の講座もありました。が、あくまで学校のカリキュラムに対応しているのは受験サプリ時代のコンテンツ、つまり受験に必要な科目だけでした。

確かに大学受験を見据えた学習支援や、基礎学力向上の手立てとしては大いに活躍できます。しかし、僕が担当する「情報の科学」や5教科以外の科目は登録されていません。

ここでまず申し上げたいのは、スタディサプリを導入しただけでは学びの遅れを完全に取り戻すのは不可能だということです。

勉強以外の学びを支える仕組みを導入すべき

スタディサプリは受験を意識した良質なコンテンツがあり、問題演習のコンテンツも充実しています。そりゃもう、授業が分かりにくいと評判の先生方が淘汰されるほどです。実際問題、これが一番インパクトがあります。受験指導に特化した、苦手分野克服のノウハウがあるプロが出演した動画コンテンツは、あまり評判が良くない先生方や塾講師の評価を更に下げることになるでしょう。

それとは別に、僕が導入を熱望している環境があります。

LMS(ラーニング・マネジメント・システム)です。勉強以外の学校行事に関わること、毎日のスケジュール管理や課題の管理が出来るシステムのことです。こればっかりは、GoogleClassroomやClassiなどの統合環境の方が優れています。大は小を兼ねます。

僕が実際に導入したいシステムは、別記事にてまとめました。

その証拠といっちゃアレですが、スタディサプリ公式サイトのセミナーレポートのページに、実際に導入された学校の事例が掲載されています。

実際に見てみると、iPadを生徒全員が所持していたり、GoogleClassroomを活用している学校があるわけです。スタディサプリが学校生活の100%をカバー出来るわけではありません。

現場の環境整備が急務

とはいえ、愛知県が全県立学校に対して導入を決定したことは、本当に嬉しく思います。ほとんどの高校生はスマホを所持していたり、ご家庭にタブレット等の端末があり、WIFI環境もある程度は整っている時代だからです。

もちろん全てのご家庭にネット環境があるとは限りませんが、大手3キャリアは25歳以下の契約者に対して通信容量を臨時的に無制限としたり、対策が取られていることも追い風となるでしょう。

最後に、文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課長 高谷浩樹氏が、GIGAスクール構想に対して抱いている想いを紹介します。

この言葉に、どれだけ励まされたことか。

紙を配ってですね、何月何日までに宿題を持って来い。それもひとつの方法ではありますが、それよりも、朝、毎朝、子どもたちと対面できる、双方向での授業ができる、子供の元気な顔を少しでも見る。こういうことをしっかりと取り組む、学校現場に取り組んで頂くという必要がございます。

動画より

この動画の台詞を文字に起こしたものが、noteにありました。

熱い。本当に熱い。使命感を感じます。この動画を何度も見ていますが、何度見ても目頭が熱くなります。教育に携わる者として、共感します。

一部で6月にでも学校が再開されることを考えて、またいつもと同じ日常が戻ってくる。生徒を40人教室に入れて授業が出来るという認識があるかもしれませんが、僕はそうは思えません。情報科の教員として、次世代の教育へとシフトする手助けをしたい。今こそ力を発揮する時だと考えています。

最後に宣伝させてください。僕が日々実践しているiPad仕事術を本にまとめました。生徒がスマホで勉強する環境を整える方法についても書きました。これまでにない授業のあり方について、学校でのiPadを使った仕事術についてのノウハウを詰め込みました。ご参考になれば幸いです。

この記事を書いた人

魚住 惇

魚住 惇

高等学校教諭で『教師のiPad仕事術』の著者。 AppleTeacher、スクールプランニングノート公式手帳達人、相棒はHHKB HYBRID Type-S 白無刻印、HHKBケーキの人。コーヒーは生豆から焙煎。Podcast「さおとめおとらいふ」始めました。

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