「これこれ。こういう本が読みたかったんだよ。」

本を読むとき、僕はあたりなのかハズレなのかをすごく気にします。しかもこれが、本屋さんにあるランキングとはかなりズレているもんだから、好きだと思える本に出会えるのに苦労します。

今から紹介するのは、友人の五藤隆介(@goryugo)さんが書かれた本です。結論から言います。好みにどストライクでした。

もう一度言いますよ。自分の好みにどストライクな本でした。ドンピシャです。こういうのが読みたかったんです。

というわけで今回は、2023年8月11日発売の、『アトミック・リーディング』について書いていきます。

本記事を執筆するにあたり、五藤隆介さんからは書籍のEPUBデータをいただきました

『アトミック・リーディング』の概要

Kindle Unlimited対応の、セルフパブリッシングによる電子のみの販売となっている書籍です。

この本を一言で説明すると、”読んだ本について語れるようになることを目標にした読書術の本”です。

五藤隆介さん(以下ごりゅごさん)は、倉下忠憲さんというビジネス書作家の方と一緒に、ブックカタリストという名前のPodcastを配信されています。

ブックカタリスト | goryugo | Substack

Hundreds of subscribers. おもしろかった本について語るPodcast&ニュースレターです. Click to read ブックカタリスト, a Substack publication.

このお二人が、読んで面白かったと思える本について語るというPodcastで、僕も毎回の配信を楽しみにしている一人です。いつも通勤中の車の中で聞いています。片道30分なので、1往復で1話分を大体聴き終えます。

このPodcastの配信が始まってから、ずっと不思議だったんですよ。どうやって本を読んだら、ここまで語れるようになるんだろうって。ずっと疑問でした。

お二人の著書を語る回や、著者本人が語るゲスト回なども時にはありますが、ほとんどは買って読んだ本について語っている内容を配信しています。

自分が書いた本でもないのに、聞いている方はまるで著者自身が語っているみたいな感覚になるんですよ。

語るための読書術を確立して、それを実践されてたんですね。どおりで毎回、聞いていてとても面白い配信に仕上がるわけだ。

余談:ファスト○○について

ちょっとだけ、最近のメディアについて語らせてください。

『映画を早送りで観る人たち』という新書をご存知でしょうか。

日々受け取る情報が多すぎる現代のイマドキの若者は、動画を倍速で再生して、あらすじのみを把握し、話題についていく。そんな事実をまとめた1冊でした。

筆者が伝えたいのは、この事実に対して、やれ風情が無いだの、最近の若者はだのという若者叩きではありませんでした。それは1つの思いとしておいといて、今の若者の生活習慣を明らかにした本でした。

この本の中で紹介されていたのは、主にオンライン授業を受けている大学生のお話でしたが、似たような話は大学生に限った話ではないなというのが僕の感想です。

人々がネットを当たり前に使うようになって、情報発信者が増えました。僕もその一人ですけどね。

これまでは一部の人しか機会がなかった情報発信を、誰もができるようになったことで、いつでも誰とでもコミュニケーションが取れる時代になった反面、人々が毎日接する情報の量そのものは増えたように思います。

この影響が出版にも出ているなと、今の世に出ている本を見ているとどうしても思いたくなります。

KIndle Unlimited対象の本を例に取っても、1ページあたりの文字数がかなり少なく、読まれるページ数を増やしてやろうという目論見が見え隠れする本が存在します。

ブログやSNSを誰もが使えるこの時代に、情報を「本」というパッケージにしてまとめる意味は、どこにあるのか。残念な成果物と、当たりは、どうやって判別したら良いのか。ここ最近は、そんなことも考えるようにもなりました。

アプリの使い方や、端的なノウハウは、読み物じゃなくてもいい。現時点での考えです。そして僕は、読み物を本として読みたい。

ファスト映画というのは、料理に例えたらファーストフードです。まるで食べ物の美味しい部分だけを切り取ったもの。とにかくお腹を膨らせたり、「美味しい」だけを味わうためのものです。

そこには、料理の楽しさや、味わう楽しさはあるんでしょうか。

聞けばファスト映画は、2時間の映画が10分程度にまとめられているらしいじゃないですか。似たような映像で言うと、新作映画の公開前に、テレビで特集される時の映像が挙げられます。正直、あれを見て把握した気になっている人もいると思うんですよ。

「ああ、これね、見たことあるよ。面白いよね。」

まるで、料理を食べた時に「美味しかったです」しか出てこない。僕はこの状態を、勿体無いと感じます。でも、倍速で見て満足する人が増えたこの現代に、味わって食事をする時間はあるんでしょうか。

本もそんな読者のニーズに合わせて変化してきた感じがします。50の法則とか、3つの理由とか、とにかく短時間で読めるような感じ。そして、早く読むための速読術。

一昔前にSNSで流行った図解投稿も似たものを感じます。特にパワポかCanvaを使った書籍のまとめも、料理をレトルトにして配っている感じ。

ファスト読書に対するアンチテーゼ

『アトミック・リーディング』を推す理由は、ファスト読書に対するアンチテーゼだと思うからです。

時短、スキマ時間、速読、倍速視聴。ここ最近のノウハウ術はみんなこんなのばかり。

でも、そんな仕事術では、好きな本について1時間語るっていうことが、できなかったと思うんですよ。それも、ごりゅごさんの実際の体験談もあって、わかりやすい。

僕は、人が知的生産をした成果物を読みたい。何にも調理されてないような、ネットや本から得た情報をまとめただけの成果物じゃなくて、その人が読書をして、自分に取り込んで、その人の体験を交えて試行錯誤して、心の汗をかいて書いた本。

そんな本を読むのが好きなんです。『アトミック・リーティング』は、ドンピシャでした。読んでいると、メモを取りながら、ゆっくりと本を読みたくなります。

そう、ゆっくり読書を楽しむっていうのを、この本でやってみたら良いんですよ。ノウハウだけを吸収しようとする速読が、たちまち残念に思えてきて、心とノートに自分の想いが残るような体験ができます。

文字数が少ない?と本人はPodcastでおっしゃっていましたが、全然大丈夫。1冊読み終えるとお腹いっぱいです。これを書いている今、2周目です。

Kindle Unlimited対象なので、加入された方は是非読んでみてください。ランキング狙いの無料本とは、全然違うから。