すっかりHHKBのラバードーム交換にハマってしまいました。HHKBエバンジェリストの魚住惇です。
ルブという潤滑剤を塗る作業にもハマり、ラバードームの交換にもハマってしまい、あとはもう好みの組み合わせを見つけるのみ!という段階にまで来ました。
ただし、deskeysのラバードームは種類も多く用意されているし、特徴もイマイチわかりにくい。それにラバードームを購入するだけで、円安の今だと送料合わせてなんだかんだ1万円くらいかかります。
求めている押下圧が定まっていたとしても、全てのラバードームを買うわけにはいきません。僕はただ、自分の好みのラバードームに出会いたいだけなんじゃ。
そんな悩みをdeskeysのサイトのContact Usからメールを送信してみたところ、レビュー用に送ってもらえることになりました。自己紹介としてHHKBエバンジェリストの記事を貼り付けておいて良かった良かった。
というわけで今回は、「DES-DOMES CARROTS」の35gをテスト用に送っていただいたので、打ち心地についてまとめようと思います。
DESKEYSのラバードームについてざっくりおさらい
私観がかなり入った内容ですが、DESKEYSが販売しているラバードームについて、少しまとめました。
DESKEYSが販売しているラバードームは全部で4種類あります。
- DES-DOMES BKE Tactile
- des-dome V2 rounder-bke style
- DES-DOMES V3
- DES-DOMES CARROTS
種類順に並べましたが、V3以外はBKEの形状がベースとなっています。BKEとはSONYがかつて製造していたVTR編集機「BKE-2000」に搭載されていたキーボード「BKE-2011」が由来となっています。
Sony BKE-2011 – Deskthority wiki
Topreの静電容量無接点のラバードームにかなり似ている形状をしていますが、このBKE-2011はメンブレン方式でした。中にスプリングが入っておらず、ラバードームが押されてキーが反応する仕組みを採用していました。
このBKE-2011のアフターパーツを製造していたKeyclack社がTopre用ドームとして販売したのがBKE Reduxドームです。これがTopre純正のラバードームよりもシャープな感覚として注目されました。
そしてKeyclackに続いてBKEの形をしたTopreキーボード用のラバードームを発売したのがDESKEYSというわけです。
DES-DOMES BKE Tactile
最初に製造された「DES-DOMES BKE Tactile」は、純正よりも鋭いタクタイル感が味わえるとして今でも人気なラバードームです。
des-dome V2 rounder-bke style
次に紹介するのがV2です。V1の改良型とも言えるV2は、BKEの形を採用しながらも、ドームの頭の部分の穴を塞ぐことで、押した時の安定感が出るよう改良されたモデルです。
僕が前回購入したのはV2の35gでした。
DES-DOMES V3
https://deskeys.io/collections/home-all-products/products/des-dome-v3
- Tactility improved stock style domes
- It’s light & quiet but still tactile
- Similar typing experience with stock 55g but not fatigue
- Accurate press weight tolerance
- Easy installing (4 domes each strip)
- RGB cutting line and V cut for each dome
- 3 weight variant only
続いてV3。V2の改良型としてV3の名前でシリーズ展開されていますが、こちらはBKEではありません。Topre純正ドームの形をしています。それでいて、純正よりもタクタイル感を向上させたものです。
ここがね、好みが分かれるポイントだと思うんですよ。BKEの方がドームの形状鋭くなっていて、円錐部分が長くなっています。これに対してTopre純正ドームは、そのままドームの形をしています。V3はBKEの形状よりもTopre寄りなので、純正部品の代替として使うのなら良いかなと思っています。どちらがタクタイル感があるのかはわかりませんが、V3は純正よりもタクタイル感があるという記述だけなので、BKEの方が強いんじゃないかと推測しています。
DES-DOME CARROTS
そして最後に紹介するのがDES-DOME CARROTSです。キャロット、つまりニンジンのことです。このドームの色からその名前が付けられました。他のドームよりもタクタイル感が強めなことが特徴です。最初は60gの赤いドームしかなかったものの、後に49gと35gが追加されました。写真に写っているのは35gなので、CARROTSの中で一番赤くないドームです。
形状を見ると確かにBKEの形状をしていて、更に頭の部分の穴が塞がれているのを見ると、どうやらV2と同じデザインのようです。
ちなみに今回のレビューにあたり、DESKEYSの社員さんにはこんな相談をしました。
「僕がこれまで購入したラバードームが”DES-DOMES BKE Tactile”の42gと、”des-dome V2 rounder-bke style”の35gで、後者の方が軽くて好みではあるものの、V2の35gよりもタクタイル感が欲しい」
この内容からDESKEYS社員さんは、「軽くてタクタイル感を味わいたいのなら、CARROTSの35gだ」と判断してくれて、送ってくれたというわけです。
相談の文章を送った当初、僕はDES-DOMEについてそこまで詳しくなくて、バージョンが違うのねぇくらいにしか把握していませんでした。この記事を書くにあたって、それぞれのバージョンの違いやBKEの意味を調べていくうちに、「なるほど、確かに自分が求めている感覚はCARROTSかもしれん」と思うようになりました。
今回も自分が無知な部分について調べたり、社員さんに直接聞くことで、かなり勉強になりました。
HHKB HYBRID Type-Sを分解
それではHHKB HYBRID Type-Sのラバードームを、DES-DOME CARROTSに付け替えていきたいと思います。
今回生贄になってもらうHHKBは、2022年にレギュラー化を果たしたHHKB雪です。2021年に限定販売されたモデルとは違って、刻印が中央に施されています。
本体を裏返して、3箇所のネジを緩めます。
HHKBを分解する際に毎回お話しすることですが、最初に外すネジ3箇所のうち、1箇所はここ、「DO NOT REMOVE」シールを剥がしたところにあります。このシールを一度剥がしてしまうと、メーカーの保証が受けられなくなるので注意と覚悟が必要です。
僕も一瞬だけ悩みましたが、送っていただいたCARROTSドームを無駄にするわけにもいきません。覚悟を決めてネジを緩めました。
3箇所のネジを緩めて蓋を開けると、フラットケーブルが繋がっているのが見えてきます。一気に表と裏を引き剥がすのは要注意です。
フラットケーブルの接続された部分を見ると、端子のところがストッパーで止められています。
この部分を爪かマイナスドライバーで上に起こすと、ケーブルが引き抜けるようになります。
Bluetooth基板ではない方の、静電容量無接点の部品が取り付けられている方の基板がこちらです。この基板の固定に使われているネジを全て外していきます。
そしてこれが、ネジを全て外して基板を上に上げた時の様子です。ラバードームが基板から剥がれて落ちてきました。基板とラバードームの間に挟まれていたスプリングも一緒に。こうなっても慌てない慌てない。
基板の裏を見てみると、へばりついてるラバードームが残っていました。これを剥がします。中のスプリングが落ちてくるので、机の上の、できれば中央付近で作業することをおすすめします。スプリングが机から落ちると、なかなか見つからず探すのに苦労します。
ちなみにこのスプリング、机に置く場合は、こんな感じに逆さにしておくと指でつまみやすくなります。
この向きで置いてしまうと、指でつまんで持ち上げるのに苦労します。変な方向に力をかけてしまうとスプリングが歪んでしまうので、やさしくやさしく扱います。
ここまででHHKBの分解完了です。
ラバードームをセットする
そのあとで、キーボード側にラバードームを乗せていきます。DESKEYSのドームは4つ繋がっているので、そのまま乗せられるならどんどん乗せていき、3つや2つ繋がっている場所に乗せる時にはハサミで切ったものを使います。
高いお金を払って買ったものを切るなんてって思うかもしれませんが、ドームの裏面にも切り込みの線が入っているので、その線に沿ってハサミの刃を当てたら簡単にカットできます。
全てのキーの場所にドームがセットできたら、その上にスプリングを置いていきます。奥まで入れる必要はなく、ドームの中心からずれない程度にそっと置いていく感じです。
全てのラバードームとスプリングがセットできたら、基板をかぶせてネジを止めていきます。
最後は分解と逆に作業していくと組み立て完了です。分解ができたのなら組み立てはそこまで時間がかからないはず。
DES-DOMES CARROTSの打ち心地
さて作業が完了したところで、CARROTSドームの打ち心地について書こうと思います。
まず、**35gのはずなのに、タクタイル感がある!**っていうのが最初に思ったことでした。V2の35gは本当にタクタイル感がなくて、個人的には微妙な感じ。でもこのCARROTSは35gでありながら、タクタイル感を強く感じました。
ただその分、静音性は弱くなった気がします。純正ドームの方が静かです。それでもこの軽快感の魅力に取り憑かれると、他のキーボードが触れなくなりそうです。
ちなみにこのHHKBはルブを施していないので、ルブ後はかなり化けそうな予感もしています。恐ろしい子に進化しそう。
「DES-DOMES BKE Tactile」と比べても、ドームの形状が改善されている分、押していて、そのままスコッと下に下がるのを感じます。ラバードームの中心に穴が空いているのと空いていないのとの差は、こういうことだったのかと、比較してみるとよくわかります。
35gが軽すぎると思う方は、CARROTSだと次の49gとなってしまい、HHKB純正の45gよりも重たくなってしまいます。重たくてもいいなら構いませんが、軽くしつつタクタイル感を味わいたいのなら、CARROTSの35gは限りなく正解に近いと思います。
それか、V2の42gも良い選択肢です。ただし、しっかりしたタクタイル感を味わいたいのならCARROTSの方が正解に近い。
CARROTの35gをしばらく使ってからV2の35gを使ってみると、キーを押した感覚がない感じがしてかなりの違和感が指に残ります。V2の35gは軽さのあまりにタクタイル感を犠牲にして、僕としては入力している感触がなさすぎてちょっと寂しい気持ちが出てきます。
しばらくしてからCARROTSの35gを使ってみると、「あ〜これこれ、この感じだよねぇ」という感覚が手元に伝わってきました。タイプ音もよくよく聞いてみると、どことなくニンジンをかじっている時の音に似ています。未ルブだと特にね。
あぁ、早くルブしたい。そうすれば、またさらに別の次元に飛べる。そんな気にさせてくれるほどの、軽くてもしっかりしているタクタイル感。それがCARROTSドームでした。
海外の2chことredditには、HHKBのラバードームの話題がよく書き込まれていますが、英語圏の方は55gや60gなどの重たいキーボードを好むようで、あまり35gや42gなどの軽い押下圧のラバードームの話題が出ていませんでした。
今回のレビューが、「HHKBの押下圧をもっと軽くしたい、でもタクタイル感は欲しい」と考えている方に届くことを願っています。
DESKEYSさん、この度はCARROTSドームを送ってくださりありがとうございました。
GPL 205g0でルブしたら素晴らしいHHKBに仕上がった
この記事を書いてから、AmazonでGPL 205g0というルブ用潤滑剤を購入して塗布してみました。もう本当に使ってて病みつきになってしまうような打ち心地のHHKBに仕上がりました。
詳しい感想等はこちらの記事にまとめましたので、ルブに興味がある方はぜひご覧になってください。