こんにちは。魚住惇です。

今回は、Fancytech社が販売しているAlice配列キーボード「FancyAlice66C」のビルドログを書いていきます。

販売元のFancytech社はキーボードキットを販売しているメーカーです。2022年7月の段階では販路をAliExpressに限定してキーボードキットやキーキャップ、ケーブルなどを販売しています。

今回は販売しているキーボードキットの中でも売れ筋の「FancyAlice66」のケースに改良が加えられた「FancyAlice66C」のキットを、Fancytech社よりお借りしました。

キットの中身

FancyAlice66Cの外箱

まずは届いたキーボードキットの中身を確認していきます。これが外箱。

新型ケース

これがケースの部品。アクリル積層による角度を付ける部品と、ボトム、トップがそれぞれ入っていました。

各種プレート

こちらがプレート類。白いのがトッププレート、その下にある2枚が基板とトッププレートの間に挟むポロン製のプレートフォームと、PE製のPCBフォームのプレートです。

FancyAlice66CのPCB

これが基板です。既にLEDやダイオード、ソケットなどが取り付けられているので、はんだ付けは不要です。

端子はUSB-C

端子はUSB-Cで、ATMEGA32U4-MUが実装されていました。

ロータリーエンコーダにも対応している

また、DELキーに相当する部分、一番右上に位置するキーには、通常のキースイッチの他にロータリーエンコーダが取り付けられるようにもなっています。

これの他に、固定に必要なネジ類が入っていました。

キット以外で組み立てに必要なもの

先ほども書きましたが、FancyAlice66Cのキットでははんだ付けが不要です。

ドライバーと、お好みのキースイッチ、キーキャップ、それとスタビライザーがあれば組み立てることができます。

LEDで光らせることを考えると、スタビライザーは透明のものを選ぶと雰囲気が出ると思います。

それぞれ遊舎工房さんなどの自作キーボード系ショップで揃います。

組み立て

それでは組み立ての工程を残していきます。

スタビライザーとPCBフォームの取り付け

組み立てにはスタビライザーが必要

最初に、基板にスタビライザーを取り付けていきます。

本来ならスタビライザーは別売りですが、今回はFancyTech社が取り扱っているものを使用しました。

スタビライザーを袋から出した

クリアブルーの美しいスタビライザーです。袋の中にはバラバラに入っていて、固定用のネジが一緒に入っていました。

スタビライザーを組み立てた

スタビライザーの部品をこのように組み立てて取り付けていくわけですが、

PCBフォーム

取り付けの前に、基板にこの薄いPCBフォームを敷いておき、その上からスタビライザーを取り付けます。このシートを敷くと、キースイッチを押し込んだ時に発生する反響音を抑える効果があるそうです。

スタビライザーとPCBフォームをPCBに取り付けた

実際に取り付けるとこのようになります。裏からネジで固定するのに、PCBフォームがぐらついたりするので少し苦労しました。

PCBフォームがズレたり破れたりするのを防ぐために、一通りのネジ止めは仮でやっておいて、全てのスタビライザーにネジが行き届いたら順番に固定していきました。

必要なスタビライザーを全て取り付けた

スタビライザーは1Uを5箇所設定しました。

プレートフォーム、トッププレートの取り付け

プレートフォームを取り付けた

PCBフォームとスタビライザーが取り付けられた基板の上に、プレートフォームを敷いていきます。ポロンと呼ばれるウレタン素材でできたシートで、衝撃を吸収する効果があるそうです。

トッププレートを取り付けた

その上から、トッププレートを更に敷きます。

キースイッチ、キーキャップの取り付け

キースイッチの取り付け

更にその上から、キースイッチを取り付けていきます。我が家は妻と子どもの3人のアパート暮らし。静音性を重視したいのでKailh BOX Silent Pinkにしました。

キースイッチの取り付けが終わった

全ての箇所にキースイッチを取り付けるとこんな感じです。

ポロン製のシールの貼り付け

その後で、トッププレートの四角い飛び出た部分に、更にポロンのシールを貼り付けていきます。

シールの貼り付けた後

貼るとこのようになります。

残りのシール

表面の全ての箇所に貼り終えたら基板を裏返して、裏面にも同じように貼っていきます。

裏面にもシールを貼り終えた

このように裏面にも貼ることで、タイピング時の衝撃を吸収しようという設計のようです。

キースイッチの取り付け

この後、お好みのキーキャップを取り付けていきます。

ケースの組み立て、基板の取り付け

ケースのボトム

最後に、ケースを組み立てて基板を取り付けていきます。角度をつける部品の上にボトム部分を置いて、上からネジ止めします。ここで使うネジは、短い方です。

PCBをケースのボトムに取り付けた

その上から基板を入れます。

ケースのトップを取り付けた

更にその上からトップ部分をかぶせます。

裏面のネジ

最後に本体を裏返して、付属していた長いネジで固定します。これでFancyAlice66Cの完成です。

FancyAlice66C完成

FancyAlice66Cの完成図

これで完成です。完成したFancyAlice66Cの写真をいくつか見せつつ、特徴などを見ていきます。

はんだ付けは不要でしたが、結構長い道のりでした。組み立てには2時間ほどかかりました。

FancyAlice66Cの右側のみ

左側はロウスタッガードを踏襲しつつ、「Q」と「A」は列が揃っています。「Z」は1/4Uズレて配置されています。その影響で、TabキーやCapsLock、Shiftの右側が揃っています。

FancyAlice66Cの左側のみ

こちらが右側です。左側とは違って、斜めの部分が全て1/4Uずつずれています。
通常のロウスタッガードのキーボードでは中段と下段のズレ幅が1/2Uとなっていますが、このFancyAlice66Cは左側の中断と下段が1/2U、右側の中段と下段が1/4Uずれています。左右でずれ幅が違うのが特徴です。

そして、斜めに配置したことで「P」と干渉しないように、「ハイフン」が少し上にずらしてあります。

「DEL」「PgUp」「PgDn」などは右側に1/4Uずつずれながら配置されていて、その下にはカーソルキーがあります。

FancyAlice66Cを真横から撮影

角度の参考に、Cherryプロファイルのキーキャップを取り付けた状態で、横から撮ってみました。

FancyAlice66CのLEDを点灯させた

LEDを全て光らせるとこんな感じです。美しい。マット仕上げのアクリルケースがLEDの光を和らげて、ボワッと光っているように見えます。

FancyAlice66CのLEDを点灯させて斜めから撮影した

このFancyAlice66Cと従来のFancyAlice66の違いは、上からのネジ止めが不要になったところです。本当はもっと早い時期にレビューを行う予定でしたが、Fancytech社とやりとりをしている際に「新しいケースのプロトタイプが出来上がるから、もう少し待ってくれ!」と聞き、完成したところで送っていただきました。

好みにもよりますが、表面にネジが見えないと、LEDの光を透過させる時に綺麗さが増す感じがします。

VIA対応なのでREMAPにも対応

ファームウェアはVIA対応のものが既に書き込まれていたので、Yoichiroさんが制作&運営されているREMAPから直接リマップを行うことができます。

ただREMAPにJSONファイルが登録されていないので、JSONファイルをGitHubより入手する必要があります。

今回は、こちらで公開されているものを使わせていただきました。

数日使ってみた感想

Alice配列のキーボードが続々と登場してきたのが2021年ごろかなって記憶していますが、その頃からずっと気にはなっていました。

7sProを距離を離して設置した

でも、自分には7sProをはじめとする分割キーボードがあり、手もHHKBに慣れています。これ以上新しい配列を試すことに意味があるのか。そう考えていると、二の足を踏んでいました。

7sProを斜めに設置した

とはいえ気になっていたので、7sProをAlice配列の角度に傾けて設置して使ってみました。ハの字に腕をおくことでHHKBよりもゆったりと腕をおいてタイピングできることに気がつきました。

この角度そのものは良かったのですが、ここで違和感を覚えました。「ハイフン」や「Enter」といった、右小指が担当するキーを押そうとした時に、ミスが目立ったのです。

このミスは、7sProを真っ直ぐな向きで左右に引き離した時には出なかったミスでした。

推測ですが、僕は大体のキーの位置を相対的な位置ではなく、絶対的な位置関係で覚えているのではないかと考えました。「F」「J」を起点とするホームポジションからの相対的な位置によって他のキーを覚えているのなら、斜めに配置したキーにも問題なく指が届くはずです。

しかし実際には本来この位置にあるであろう場所に触れてしまい、誤打につながってしまいました。

FancyAlice66Cの全体像

Alice配列では、斜めの部分にホームポジションのほとんどのキーが配置されています。

驚いたことに、手は斜めに置いていたとしても、「ハイフン」を手元を見ずに入力することができてしまいました。「キーボード」と入力する際も、これまでの感覚で打つことができました。

7sProを斜めにして使うよりも明らかに快適でした。「A」と「;」にそれぞれの小指をセットする際も、斜めと水平の境目のキーであるにもかかわらず、実際に指を置いてみると自然と使えます。

ローマ字の組み合わせ的に右手のみを使用する単語「ポップコーン」も、運指の移行コストを割くことなく入力できました。

それでいて、キーボードに手をセットしたままの姿勢でいても、腕がハの字におけているので通常のキーボードよりもゆったりできています。Alice配列のキーボードをTwitterでもよく見かけるようになった理由が、ようやく分かった気がします。

使っていて、本当に快適です。HHKBからの移行も容易で、ほぼ同じ感覚で使えました。

今回は、Fancytech社より発売中のFancyAlice66に新型ケースを採用した「FancyAlice66C」をレビューしました。AliExpressから購入できます。価格は2022年7月現在で14757円です。

今回のレビュー品をAliExpressを通して送ってもらった際は、日本に届くまで16日ほどかかりました。

Alice配列の60%キーボードの候補として、個人的には「FancyAlice66C」はありだなと思いました。他のAlice配列を試したわけではありませんが、はんだ付け不要のキットとして、価格的にも魅力的だと思います。

以上、「FancyAlice66C」のビルドログでした。