GWが明けて2週間が経ちました。未だにGW課題が全てやり切れていない生徒もいると思います。中には何度も再提出となったり、授業後に残って課題に取り組んでいる生徒もいます。

学校というのは、授業として存在する教科・科目の成績でしか評価がし辛い場所です。しかし、あれだけの教科が存在しているとしても、それでは評価が仕切れない側面があるものです。

今日は、課題の取り組み状況が悪いと判断されている生徒のフォーカスを当てていきます。

A君が課題を終わらせられない理由

未だにGW課題を終わらせていない生徒を、仮にA君としましょう。実在しない生徒とします。A君は各教科の担当の先生から「部活なんてやってる場合じゃありません!残ってでも課題を終わらせなさい!」と立て続けに言われました。それもそのはず、彼はGWが明けたにも関わらず、連休に入る前に出された課題を一切手を付けていなかったのです。

この「GW課題をちゃんと提出をする」ということができなかったA君は、その側面から「休み中に課題が取り組めない生徒」として先生方から見られ、注意されます。

この生徒、僕が担任しているクラスの生徒ではないため、僕自身も最初は「この子は、期限内に課題が提出できない子だなぁ」くらいにしか認識していませんでした。

しかし、このA君と少し話す機会があり、「GW課題が出ていないって、色んな先生から色々言われているそうじゃないか。GW中は何をしていたんだい?」と聞いてみることにしました。

A君は、「出かけていました」とだけ答えたんです。これだけで判断すると、遊びほうけている印象しか生まれないと思ったので、僕は詳しく聞いてみることにしました。

するとA君はこうも話してくれました。「連休を利用して、○○(地元から180km離れた場所)まで行ってきました。自転車で。テントも積んだので、2日半かけて目的地まで行きました。母にはかなり怒られましたけど、沢山お土産を買っていったので、それで許してもらえました。往復で5日ほどかかったので、今年のGWはこれで終わりました。」

課題未提出だけでは判断できない

これを読んで下さっている方がどこかで教員をされているなら、あなたはこういう生徒に対して、どの様に指導されますか?

僕は正直、彼を「ただGW課題を連休中にやることができなかった生徒」として、「課題をちゃんとやれ!」と指導することはどうしても出来ませんでした。だらだらとYoutubeやTikTokばかりを見て連休を過ごしていたわけではなく、貴重な経験として今後に活かせるような行動を、自らの意思で取っていたんだと僕は感じたのです。

課題を期限を守って提出をする。社会に出るにあたって必要なことだ。その尺度だけでA君を見たら、確かに不真面目です。しかし、それだけの長距離を、自分なりに用意した装備で挑み、無事に帰ってくる。A君の好きなことに対する執着心や、粘り強さというものは、今の学校制度での成績では、決して計ることができないよなとも思いました。

好きな事に対する情熱

今の学校という場所は、「努力をしたら必ず報われる」という考え方のもとに指導している先生方が非常に多くいらっしゃいます。

それもある程度は正しいかなと、僕は思いますが、それが100%正しいとは思いません。頑張り方を間違えたままだと、努力しても結果が付いてこないからです。

それと、僕は努力や根性といった精神論よりも、もっと効果が出る方法を知っています。「努力は夢中に勝てない」です。結局の所、どれだけ頑張っている、努力していると自覚していても、時間が過ぎるのを忘れるほど夢中になり没頭している人には勝てないんですよ。自分が今努力しているって思っている時点で、その事が好きじゃないんです。となれば、本当にそのことが好きで、努力を努力とも思わないくらい夢中になってのめり込んでいる人には敵いっこないんですよ。

僕は、それだけA君がのめり込んでいる自転車の旅の話に、心から感動して、素直に彼を尊敬しました。自分じゃやろうとも思わなかったことを、誰よりも楽しんで前に進んでいこうとする意気込みと、実行に移した行動力は、GW課題未提出という言葉の前で多くの先生方には届かなくなってしまったものの、僕の心には響きました

確かに課題がやれてなくて色んな先生方に迷惑をかけているには違いないんですが、それだけでは判断できないよなとも思いました。

輝いている姿に泥を塗ってはいけない

多くの先生方は、A君の長所を、勉強を疎かにしているとか、学校生活を大切にしていないとか、そういった目で見るでしょう。彼の学校生活を見る限りでは、そう判断されても仕方ない行動を取っています。

しかしその判断の下では、人間の人柄の良さや、他の人よりも長けている能力を見出すことは不可能です。

人が、自分が好きな事について語るのを見ていると、目がとってもキラキラと輝いていて、何よりも楽しそうで、聞いている僕自身とってもワクワクしてきます。本当に自分が楽しいことを話してくれるんだなって思うだけで、聞いているこっちも楽しくなるんですよ。

そんな学校生活では少し浮いてしまいがちな、それでいてその子にしかない長所をわかってあげられる。そんなことをやってやれる唯一の先生でありたい。A君の話を聞いていて、そう思いました。

ま、そんなA君が実在したら、数日もかけて独りで旅するとか、普通に補導案件ですけどね。これは、あくまで架空の話ですよ。