現行の学習指導要領では、高等学校情報科の必履修科目は「社会と情報」と「情報の科学」でした。これが新学習指導要領では「情報Ⅰ」と「情報Ⅱ」となり、情報Ⅰが必履修科目となります。この情報Ⅰにはプログラミングの内容が含まれているため、全国の高校生がプログラミング教育を受けることになるんだということが話題となっていました。

今回紹介するのは、「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」の実施に合わせて文部科学省のサイトに公開された、教員研修用教材です。2019年5月16日現在では、まだ一部しか公開されていませんが、情報の科目の未来を知るにはもってこいの情報が多数載せられていますので、ここで話題にしたいと思います。

2019年7月追記

文科省のサイトからPDFへのリンクがなくなっていることを確認しました。

2024年から全国の高等学校で「情報Ⅰ」が始まる

すでに幼稚園ではカリキュラムが新学習指導要領に切り替わっていますが、小学校では平成30年度と平成31年度(記事を書いている今年度、令和元年度とは言いません)に一部の実験校で先行実施しています。中学校で切り替わるのは2021年(令和3年度)から、高等学校は2024年度(令和4年度)からとなります。今年は2019年なので、高校で考えると5年後に始まる教科だということになります。

また、平成31年度に実施される愛知県の教員採用試験、つまり令和2年度採用のための試験から、高等学校1種・情報の教員免許のみでの受験が可能となりました。このことからより専門的な知識を持った人達の受験が想定されますし、愛知県の「情報Ⅰ」への対応に力を入れている姿勢が伺えます。

今回話題にしている「情報Ⅰ」の教員研修用教材は、現任の情報の先生方はもちろんのこと、これから情報科に携わっていく方の目に触れていただけたらと思います。

こんな人におすすめの記事です?

<div class="wp-block-snow-monkey-blocks-list smb-list" data-icon="check-circle">
  <ul>
    <li>
      これから情報科教員を目指す人
    </li>
    <li>
      MS Office中心の授業から脱却した人
    </li>
    <li>
      情報科教育の最新情報が知りたい人
    </li>
  </ul>
</div>

資料中で使用しているプログラミング言語は「python」

情報Ⅰに盛り込まれているプログラミング教育で、どの言語を使うのかというのは、情報科の研究会でも度々議論となる話題です。

現状でいうと、コンピュータ室のパソコンには全てにMicrosoft Officeがインストールされているため、Excelを起動すればVBAが使えます。こうした理由から教科書に記載されているプログラム例がVBAであることが多くあります。

また、ブラウザとエディタさえあれば実行と編集が用意であることから、JavaScriptを作用している教科書も見られます。コンピュータ室のパソコンは環境復元ソフトがインストールされているので、専門知識のない先生はうまくソフトウェアのいんすとーるが行えません。WindowsならIEとメモ帳があれば、JavaScriptが動かせる。そういう考え方の先生方もいらっしゃいます。

しかし、現在公開されている情報Ⅰの研修教材では、pythonを使うことが前提で作られています。足りないライブラリはpipコマンドで追加したりと、やや本格的です。

更には、関数の作成から、WebAPIの利用までもが応用として盛り込まれています。既存のプログラムやサービスを上手く利用して、独自のプログラムを作るという内容です。

情報Ⅰでのプログラミング教育は、あくまでアルゴリズムの理解が目的です。一つの言語に依存することは避けるべきことです。きっと将来、新しい言語が出てきた際に、研修での言語が変わることは十分に考えられます。

情報デザイン

デザインの基礎が、情報Ⅰで学べるようになっています。ポスターやウェブサイトなどを作成する際に、ペルソナを設定してプロトタイピングを行うという手順が実習に盛り込まれるようになりました。

「社会と情報」や「情報の科学」にはここまで詳しくデザインについて学ぶことはありませんでしたが、情報を発信する上で学ぶことが必須となりました。

draw.ioやテキストマイニングも登場

最早、図を描くのにWordを使うのは古いんです。ブラウザで利用できるダイアグラム「draw.io」の方が効率良いですよ。という内容が研修内容に入っていて驚きました。

また、松岡修造さんのツイッターのつぶやきをテキストマイニングにかけて、分析をするといった内容も入っています。

ここまでのことは、これまでの科目には入っていませんでした。僕自身draw.ioを使ってテスト問題に利用する図形を作成することはあっても、生徒に使わせることはありませんでした。まさかここまで色んなサービスを利用することが求められているとは。

リテラシーの高さが求められている

パッと見た感じ、現在の主流のツールや言語が研修に盛り込まれている印象がありました。先生方の中には「また新しいソフトの使い方を1から覚え直すのか」とお考えの方もいらっしゃいますが、情報という教科は常に新しい考え方を教えていく教科です。今後変わることのないであろう過去の歴史を教える教科や、同じ数式を使い続ける数学とは特性がどえらい異なります。

僕はこの教科の教員なれて、本当に良かった。常に新しいことが追えて、毎日が楽しいですよ。

※2019年7月現在は、PDFへのリンクが消されています