2023年。つまり令和5年度。僕は高校3年生の担任をしています。これを書いているのは、ちょうど夏休みの時期です。
高校3年生の担任は、この夏休みに「調査書」という書類を作ります。一言で言えば、進学先や就職先に送付する書類の一つです。
様式のWordファイルが、文科省の「入学者選抜実施要項」のページからダウンロードできるようになっています。
入学者選抜実施要項:文部科学省
特にこの様式の、このページの部分。「学習における特徴等」や「行動の特徴、特技等」という部分に、どんな文言を書くのか。
これがね、若手教員にとって、初めて担任をやる教員にとって、悩みの種なんですよ。
僕も最初は苦労しました。文章を書くことが、ブログを書き続けてるなりに苦手ではないんですけど、どうしてもね、この調査書のこの欄は、ねぇ。
かなり負担なんですよ。
教員人生が長くなるにつれて、ある程度の経験を積んだ状態だと、そこの欄に書く文言も蓄積されていくので難なくこなせるようにはなると思います。
ただ、そこまでに到達するまでに、自分だけの力ではどうしても時間と労力がかかります。
さて今回紹介する本は、調査書作成の労力をかなり軽減してくれる1冊です。
『高等学校所見文例集』の概要
このページのタイトルにも書きましたが、ここでも宣言します。
僕はこの本のおかげで、調査書の所見を1日で終わらせました。
もう一度言いますよ。1クラス分の調査書の所見を、夏休みの1日で終わらせました。
お盆前にして、担任しているクラス全員の調査書を起案してから夏休みに入りました。
信じられます?僕自身、未だに半信半疑だと思ってるくらいです。でももう終わったんですよ。
この魚住惇、ここ3年ほど副担任をやっておりませんでしたが、2023年は担任に抜擢されました。
所見の文章だって、ずっと書いていませんでした。
そんな僕が頼りにしたのが、今回紹介する本です。学校DX物語と同じ方が編集を担当されています。
販促用として画像をいくつかいただきました。
はい、まず1枚目。これこれ、こういうのを待っていたんですよ。
続いて2枚目。これは探究学習のテーマについて、こんな学習ができたよという内容を表現している例文です。
続いて、ホームルームでの様子についての材料です。生徒の性格について話すときの、具体例として、近しいものがあれば書き足せるような文言が紹介されています。
例文をうまく使う手順
ここからは、販促用の画像を載せつつ、今回どうやってこの例文を効果的に活用したのかを書き起こしてみます。
僕が今回この所見文例集を活用したときは、次の手順で作業しました。
- 所見文例集を一通り読み込む
- クラス名簿を眺めて、1学期の生徒の様子を思い浮かべる
- 所見の入力欄を開く
- 所見文例集を見て、ピンと来たものを参考にする
まずね、本書が届いたら、あまり深く考えずにパラパラとページをめくります。すると、どの辺りに何が書いてあるかが、だいたい分かってきます。
そのあとで、自分が担任をしているクラスの名簿を眺めます。「あー、この生徒はこんなことがあったなぁ」なんてことを自然と思えてきます。
そして所見の入力欄を開いて、所見文例集を開こうとした時に、こう思うわけですよ。
「あ、この生徒は、あの文章がピッタリだな」
この本だと、販促用の画像にもある通り、ジャンルごとに分かれています。活発な生徒や、物静かな生徒など、大まかな特徴ごとに文章が分類されているので、今から文章を書こうとしている生徒の性格に合ったページが大体分かってきます。
そして最後に、そのページの中から「あ、これだな」と思えるフレーズを見つけたら、それを参考にしながら書くわけです。
これがね、WordとかExcelに文章が入力されていると、コピペで済んでしまうんですけど、これが紙の本であることにも、僕にとっては意味があったんですよ。
「あの生徒には、このフレーズがピッタリだな」と思えたものを発見できたとしても、入力している途中で「いや、この子はここはこの表現がいいよな」なんて思えることが多々あります。
なんでかわかりませんが、コピペではそこまで思わなくても、入力していると、指を動かしているからか、そう思えてきます。
そんな時に、掲載されているフレーズを100%そのまま使うのではなく、ちょっとだけアレンジして使う。そうすると、その生徒を例文の型に当てはめるのではなく、参考にしつつ文章を書いたことになるわけです。
この本に頼っても良いのか
こうした例文などを所見に応用することそのものを良しとしないというご意見について、持論を述べたいと思います。
きっとどの学校にも、先人たちの知恵としての文章やら、Excelに文章がまとまったものなどが存在していると思います。
ただ、それと同じくらい、「そんなものに頼るな!自分の頭で考えてこそ、意味がある所見になるんだ!」と考えている先生方もまた、いらっしゃります。主に管理職の先生方ですけどね。
ChatGPTの活用についても同じことが言えますが、その人が、こうした文章を参考にしたり、ChatGPTなどを利用したり、他の人に書いてもらったという事実はあったとしても、それって、どうやって判明するのでしょう。
よくない事例として取り上げられるときは、”やりすぎ”だと思われる時だと思っています。
例えば、学習面での所見文を書くとして、「日々の努力を継続し、学力を着実に向上させた」という文章を書いたとして、同じ文章をクラス全員の所見の入力欄にコピペしたとすれば、流石に”やりすぎ”だと思います。
特に、複数人の調査書を一気に出すと、同じ内容であることに気づかれる可能性が高くなります。それがそのまま、「生徒のことをちゃんと見てないな」というマイナスの評価にも繋がりかねません。
「流用」と「活用」、「コピペ」と「参考」のニュアンスの違い。
だからせめて、適当にやったと思われないためにも、僕の場合は上記の手順に作業したわけです。
若手からベテランまで、幅広く勧められる本
冒頭にも書きましたが、この手の例文は、学校ごとにも蓄積がある程度ありますし、先輩の先生方からありがたいファイルをいただくこともしばしばあります。
もちろんそれで事足りることもあるわけですが、その上で僕は、自分の言葉の表現を広げるという意味でも、1冊手元にあると良いんじゃないかなと思います。
ただちょっと、書籍としてはお高い部類に入るので、例えば公費で買うとか。学校の予算で購入されるとお財布的にも学校的にも助かると思います。その学年の先生方が譲り合いながら見ることを考えたら、学校に1冊あると良いですね。
2023年8月発売の本です。鮮度が高いうちに、いかがでしょうか。おすすめです。