生徒たちに、紙の手帳を半ば強制的に使わせるのは、僕は嫌だなぁ。最近、こればっかり考えている。

手帳と人間の相性問題

手帳と人間には、相性が必ずある。人によって使いやすい手帳もあれば、使いづらい手帳もある。手帳売り場であれだけの数の手帳が売られているんだから。全ての人に合う手帳が存在しないっていうことが手帳の種類を見ただけでもわかる。

確かに、高校生と相性が良い手帳、特に学校生活と相性が良い手帳はあるかもしれないけど、もっと選択肢があっても良いと思う。

そもそも手帳とは、スケジュール管理だけじゃなくて、タスク管理や日々の記録など多岐にわたる。ただ予定を書くだけじゃなくて、使う人の考え方や、その人の生き方がそのまま出てくるもの。100人が手帳を使うとすれば、100通りの使い道があっても不思議じゃ無い。もし100人が全員同じ使い方をしていたら、それは1つの考え方、つまり思想がその100人を支配していることに他ならない。

それだけ使い方に多様性がある手帳を**「使え!書け!」と強制するのは、僕の主義ではない。**

この話の手帳を、文房具のペンに例えてみよう。本来、どのペンを使っても良いのだ。最低限のルールとして、提出書類には消えないペンを使ったり、マークカードには黒鉛を使った鉛筆やシャープペンシルを使うことは決まっている。しかし、それ以外は自由に選択して良いのだ。

Dr.Gripでも良いし、αゲルでも良い。万年筆の沼にハマるのも良い。最近話題の折れないシャーペンでも良い。自分が使っていて心地よいもの、使いやすいものを使うのが、その人にとって一番良いはずだ。

生徒に手帳を使わせるということは、重要なことだ。人間が手帳を使うことでのメリットは大きい。それは大人にもなれば、例え手帳を使っていない人であっても、メリットの大きさくらいはわかっている。

しかし、手帳を使う事のメリットを子供たちに伝える時に、「明日の予定を必ず記入しなさい!」だとか「今から言うことを、必ず手帳に書きなさい」とか、強制的に使わせることは、手帳を使う事のメリットを子供たちに伝えるという役目を果たしているだろうか。

「使え!書け!」そう言われて、手帳を心から使いたいと思う生徒は、いるだろうか。

僕は手帳が好きだ

僕は手帳が好きだ。大好きだ。書くことが好きで、見返すことも好きで、とにかくそれを持ち歩くのが好きなんだ。使っていくことで愛着も湧くんだけど。それだけじゃなくて、とにかく便利なんだ。

色んなことを手帳に書いておくだけで忘れて良いし、自分の考えやその日に起こったことを書いておくと、手帳がなんだか自分の分身のようにも思えてくるんだ。

この領域にまで辿り着いたのは、これまで手帳を使ったり使わなかったり、近づいては離れてを繰り返して、長い間手帳について考えて、自分自身を見つめてきたからだ。

テレビ番組「俺のダンディズム」に登場するマダムは、番組内で手帳をこう表現した。

手帳選びは、恋人選びと一緒なの。一目惚れで付き合うこともあれば、中身で付き合うこともある。自分では絶対に大丈夫だと思っていたのに、実際付き合ってみると、うまくいかないなんてこともあるの。それだけ手帳選びは難しいってことね。

ほんと、その通りだなって思います。その時自分がおかれた環境、職業、立場によって、相性の良い手帳は変わってくる。選ぶ自由が手帳にはある。カスタマイズして、自分色に染めることもできる。もし相性が合わなかったら、お別れをすることも許されている。

手帳って、本来そういうものだと思う。

手帳はあくまで道具だ。使ったら人間が過ごしやすくなるための、これからを気持ちよく生きていくための道具だ。

この気持ちを生徒に伝えるために話していること

何度も書こう。僕は手帳が好きだ。書くことが好きだ。手帳を使う事は楽しいことで、自分が磨かれていく。この楽しさを伝えることが、使う事を強制することよりも、生徒の心に響くメッセージだと僕は思っている。

なので、担任しているクラスや、受け持っている授業では、次のように説明している。

じゅん

書いたら忘れて良いんだよ。宿題のページ数を家に着くまで忘れずに覚え続けるのは大変でしょ?書かずに覚え続けておくことの方が疲れるんだよ

じゅん

一言で良いから、今日1日の出来事やその時の自分の気持ちについて書いてごらん。自分がどういう人間なのかが分かるようになるよ。どんな時に気分が落ち込んだり、前日に何時間寝たら次の日の授業中に眠たくなくなるのか書くことが増えると、自分自身のことがどんどん分かってくるんだ。

新しい道具を流行らせる、みんなに使ってもらうことに必要なことは、**強制ではなく、使ったら凄く便利なんだよ!ということを伝えること。**iPhoneは使えと強制されなくてもこの通り流行った。

いくら口コミが☆5で、すごく美味しいからって、「このランチ美味しいから食えー!」と無理矢理口の中に入れられても、本当は美味しいもののはずなのに、逆に食欲を失ってしまう

生徒のみんなには、手帳を嫌いになって欲しくないな。

本当に手帳が好きだから。