『スマホが脳を「破壊」する 』が本当に伝えたいことにみんな気づいてないから著者の代わりに書くわ

はぁ、はぁ、はぁ、タイトルを書くだけでもしんどい。短くまとめようとするとボロカスに言ってしまいそうだったので、やんわり系にしましたよ。こんにちは。

twitterとかを見ているとね、たまにこの本を紹介する人がいるんですよ。

2018年3月に発売された本です。出た時からそこそこ話題になりました。特に教育界隈で。

まずこのパワーワードすぎるタイトルが目を引きますね。言葉を何も考えずにそのまま受け取ると「スマホって学力を破壊しちゃうんだー」ってなりますよね。

この本の著者である川島隆太先生という方は、「脳を鍛える大人のDSトレーニング」の監修をした人です。つまり、広い意味で言うとコンピュータで学習ができるぞ!ということを言った人です。

その先生がね、今度は「スマホが学力を破壊する」とか言ってるわけですよ。

ちなみに当時のPRESIDENT Onlineにこんな記事が出ていました。

よくある本の販促記事ですね。それ自体は良いんですが、この本のキモとなるグラフがこの記事にも出ています。

“スマホが学力を破壊する”これだけの根拠 PRESIDENT Onlineより引用
https://president.jp/articles/-/24764

先ほどのリンク先より画像を拝借してきました。このグラフは縦軸が数学のテストの平均点、横軸がスマホの使用時間です。

このグラフから読み取れることは、家庭学習時間が長い子どもであっても、スマホを使用する時間が長ければ、数学の点数が低い結果になってしまうということです。川島先生はこの調査結果に恐怖し、「スマホを長時間子どもに触らせるのは危険なことだ」と、記事や著書で警告を発しています。

特にスマホを四六時中使っている子どもに危機感を抱いている人には刺さりそうな内容ですが、僕からしたら何かオカシイなと感じます。脳トレの監修者がこんなこと言うか?と思ったわけですよ。かなり批判気味に本書を読み進めていました。

でもね、読んでいるうちに、僕なりの解釈に到達しました。

この本は、シン・ゴジラのように社会を試しているのでは?

本の内容が曖昧すぎる

川島先生は、まず『スマホが学力を破壊する』を2018年3月21日に出版し、その後の2019年12月20日に続編である『最新研究が明らかにした衝撃の事実 スマホが脳を「破壊」する』を出版されています。

今回この記事を書くにあたって、僕が読み進めたのは続編です。続編であることをよく調べずに、Kindle版が440円か、買おっっていう感覚で買いました。続編の最初に「スマホが学力を破壊する」のおさらい的な内容が書かれていたので助かりました。

この本は本当に凄かったです。何が凄いかって、内容が曖昧すぎるんですよ。ちょっと引用しながら説明しますね。

スマホ使用が学力を低下させることには、前著に示した通り明白なエビデンスがありますが、何故スマホ使用によって学力が低下するのかを説明できる明確な「理由」はわかっていません

『スマホが脳を「破壊」する』位置: 14

Kindle版なので引用元が行数になっています。読み進めて14行目にして、いきなり核心に迫った感じがします。何故スマホを使ったら学力が低下するのかが川島先生自身も分かってないんですよ。

そして例のグラフについても、次の様に語っていました。

スマホ利用と睡眠時間、家庭学習時間に相関関係があることはわかっても、原因と結果を示す因果関係まではわかりません

『スマホが脳を「破壊」する』位置: 47

え?あ?んん???相関関係があっても因果関係はわからない????

僕はこの文章を読んだとき、この本が脳裏を過りました。相関関係があっても因果関係がわからないということは、スマホを長時間利用した子どものテストの点数が低いということがグラフから読み取れたとしても、テストの点数が低い原因がスマホの長時間利用かはわからないということです。因果関係がわからないということはそういうことです。

更に、本書の中盤では、スマホを利用している時は脳の前頭前野が働いていないという考えを発していて、「齟齬」「鷹揚」という単語の意味を、紙の辞書を使って調べた時と、スマホを使ってウィキペディアで検索した時の脳活動を計測したグラフが紹介されていました。その結果、

(1)前頭前野は紙の辞書を使った時にのみ活動する (2)単語の検索数はスマホとウィキペディアを使った時の方が多い  スマホを利用すると効率的に検索できていますが、前頭前野については働かないことがわかりました

『スマホが脳を「破壊」する』位置: 289

とまとめられていました。紙の辞書を引いている時には確かに前頭前野が働いていたんでしょうね。計測した結果がそう言っているのですから。

でもそれって、調べたい単語の意味が載っている箇所を探している作業自体に脳を使ってしまい、余計なリソースが発生しているのでは?と思うわけですよ。重要なのは意味を調べた上で、その内容を学習に活かすことですよ。

先日別の記事で話題にしましたが、スマホが登場してからというもの、ガラケーでメールをやりとりしていた時代と比べて、コミュニケーションの頻度が上がった文化へと移り変わりました。LINEのメッセージの名前が「トーク」になっているところから見てとれます。

しかしですね、川島先生はなんと前書の頃はガラケーしか所持しておらず、続編でようやくスマホを手にしていることが本文に書かれていたんですよ。

ちなみに私は、これまで使っていた所謂ガラケーが壊れてしまい、現在は電話の際には所謂ガラホ、メール等ではスマホを使うという、ケータイ2台持ちの立派な依存症予備軍ですが、

『スマホが脳を「破壊」する』位置:202

僕が常々考えている、スマホの批判をする人は実はスマホをよく知らず使いこなしていないのでは?説がここでも浮上するわけですよ。

更に川島先生は、子ども達の大切な時間がスマホに奪われていることから、こうも記しています。

皆さんも、うすうす、スマホの使い過ぎはちょっとまずいんじゃないか、スマホの使い過ぎによって個人や社会全体にとっても悪いことが生じているんじゃないかと気づいているのではありませんか

『スマホが脳を「破壊」する』位置:460

この考え方、どこかで見たことがあります。そう、あれだ。

これに似たものを感じます。大人からみて、子ども達がゲームにスマホに夢中になっている姿は、正直どうかと思う。自分が子どもの頃はそんなもの無かった。とか言う人達の考え方です。

この本の狙いはツッコミ待ちだったのでは?

学習時間の低下と学力低下とスマホの長時間利用に相関関係があることだけしかわからず、因果関係まではわからないという調査結果。そこから可能性が否定できないという言い回しでしか語ることが出来ない内容。そして本書の最後にあったこの言葉。

私は講演会の最後には、「私を含めて偉そうなことをいっている『大人』の意見を素直に信じるな。今の大人達は自分の金儲けのことしか考えていない。自分の将来を守るためには、自分で調べ、自分で考え、その上で自分の行動を決めなくてはいけない」ということにしています

『スマホが脳を「破壊」する』位置:365

川島先生、もはや自分自身に返ってくるようなブーメランを投げているしか思えないよ・・・。

そこまで思った僕は、「はっ」と気づいたのでした。

ひょっとして、こういうツッコミを、待ってる??

本書の言うことを真に受けて「ほらやっぱりスマホはあかん!」という、メディアの印象操作をそのまま信じて、子ども達にまでそれを正しいことだとして教えている大人が増えている事に対して、「いやいや因果関係がないなら、そうとは言えんでしょうが!」という真っ当なツッコミを待っていたのでは?

私は講演会の最後には、「私を含めて偉そうなことをいっている『大人』の意見を素直に信じるな。今の大人達は自分の金儲けのことしか考えていない。自分の将来を守るためには、自分で調べ、自分で考え、その上で自分の行動を決めなくてはいけない」ということにしています

『スマホが脳を「破壊」する』位置:365

出なきゃ、講演会でわざわざこんなこと言わんでしょ。この文章を最後に持ってくるあたり、本の内容をそのまま信じるのではなく、ちゃんと見極めてね!というメッセージだと僕は思うわけです。

さいごに

『スマホが学力を破壊する』のAmazonでのレビューが割れています。主に「スマホ本当にこわい!」という意見と、「それあなたの感想ですよね?」という意見にです。

本文を読んでみると本当にわかります。「可能性は捨てきれません」「詳しいことはわかっていません」という、そもそもグラフを読み解きましたっていう本で使って良いのかと思われる表現が満載なのと、先ほども書いた最後の言葉。

僕としては魁!!クロマティ高校に出てくる「それはひょっとしてギャグで言ってるのか!?」が脳裏に浮かぶほどではあったんですが、それと同時に、「これは情報モラル教育に従事している教員として、試されているのか?」とも思ったのでした。過剰な解釈ですかね。

そんな僕は、「スマホで勉強しましょう!」推進派です。詳しくは『教師のiPad仕事術』をお読み下しあ!

この記事を書いた人

魚住 惇

高等学校教諭で『教師のiPad仕事術』の著者。 AppleTeacher、スクールプランニングノート公式手帳達人、相棒はHHKB HYBRID Type-S 白無刻印、HHKBケーキの人。コーヒーは生豆から焙煎。Podcast「さおとめおとらいふ」始めました。

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