学事出版から出版される『学校の時間対効果を見直す!エビデンスで効果が上がる16の教育事例』という本を購入しました。発売日よりも一足お先に読むことができました。

内容をざっくり紹介

この本の目次はこんな感じです。

  • 序章 エビデンスを使って学校を見直す!
    • 時間をかければいい授業ができるのか?
    • 教師の仕事の効果を確かめる強力な武器=「エビデンス」
    • 学校を見直すための手順
    • 頭の整理箱!「SICO」のフレームワーク
    • 4つの判断材料で意思決定!
  • 第1章 学習指導編
    • テーマ1 広まりつつある協同学習。果たしてその効果は!?
    • ■テーマ2 時間がないなか、振り返りをする意義はあるのか?
    • ■テーマ3 伸びが見えにくい読解力。音読はその特効薬になる!?
    • ■テーマ4 意見真っ二つ!? 宿題は学力向上を促すか?
    • ■テーマ5 新しい指導法には飛びつくな!?
    • ■テーマ6 増えてきたICT機器の「時間対効果」はいかに?
    • ■テーマ7 夏の課外授業をすれば学力は上がる?
    • [COLUMN]若手教師にとっての新たな選択肢「エビデンス」
  • 第2章 生活指導編
    • ■テーマ8 キレやすい子どもに学校は何ができるのか?
    • ■テーマ9 日本では当たり前の制服! その効果は果たして…
    • ■テーマ10 席替えはくじ?それとも……?
    • ■テーマ11 忙しすぎる中学生。運動と勉強は比例それとも反比例!?
    • ■テーマ12 クラスで賞を取れた!が…
    • ■テーマ13 朝の時間に本を読むべきか? 運動すべきか?
    • [COLUMN]エビデンスは調味料 第3章 教師の業務編
    • ■テーマ14 黒板周りの掲示物は、児童・生徒にどう影響する?
    • ■テーマ15 毎年恒例の指導案作り。その時間対効果はいかに!?
    • ■テーマ16 毎日の学級通信が良いクラスを作る!?

これらの内容について、4人の登場人物(全員が学校の先生)が各々登場します。会話が繰り広げられるのが前半、その話題についてのエビデンスを用いた解説が後半です。その間に、SICOというフレームワークを用いて前半で起こっている問題のポイントを整理していく流れでした。更には読者の意見を記入する欄まで付けて。これみた瞬間、教材に近いなと思っちゃいました笑。

ターゲットは勤続10年目以降の教員

この本の発売を知った時、まず僕が感じたのが「これは読みたい!」という想いでした。タイトルを見た瞬間に読みたくなりました。それもそのはずで、先ほど話した登場人物のうち、10年ほど教師として働いた人が3人も登場してきたのです。「あぁ、僕の年代というか、教員を10年やって、そろそろ自分の色を出したいと思った先生を狙い撃ちしてんだな」って感じましたよ。

教諭として採用されて数年は、ベテラン先生の教えの通りに仕事をしようとします。採用されてから長い先生なら、これまでの経験や学んだ内容を頼りに仕事をしたり、若い先生に共有したりします。じゃあその間に位置する、30代の先生はというと、いよいよこの辺りから自分の色とも表現すべき教育観が形成されつつある時期なのです。

するとね、ぶつかるわけですよ。30代の先生と年配の先生方で。教育課程が新しい時代に対応するこの変革を迎える時期だと尚更です。

この本は、そのぶつかり方の典型例が会話の中にも表現されていて、とても忠実に「教員間トラブルあるある」が再現されていましたよ。僕なんて「そうそうそう」って終始思いながら読んでいました。

エビデンスは本来重要視すべきもの

学校という環境は社会の中でも結構特殊な環境でして、先日読んだ本『「空気」を読んでも従わない』に書かれているような独特な世間ルールが存在しています。

  • 年上が偉い
  • 苦労が当たり前で楽をしてはいけない
  • 自分が経験したことこそ全て

などです。もっと挙げることもできますがきりがありません。

このことから言えるのは、科学的根拠、つまりエビデンスがあまり関わっていないこと。昔からの「例年通り」が見直されないままここまできていることです。

第二次世界大戦後の学習指導要領は、これまで7回ほど変遷されてきました。しかし、未だに教員の世界では、努力・気合い、やる気という極めて不安定な要素を重要視する傾向があります。この重要視する要素にエビデンスを加えることで、今以上に学校環境が良くなると僕は信じています。っていうか無駄なことが多すぎ。もっとシンプルに仕事がしたい。

新聞を読むことを強要する先生

スマホが登場して、これまで様々な道具を使っていたものが、スマホ1台で済むようになりました。本や新聞などの既存の紙メディアも、スマホに代替されるようになってきました。電車の中で周りを見渡しても、新聞を読む人よりもスマホを操作する人が圧倒的に多くなりました。

情報を紙に印刷して販売するよりも速く伝達できるシステムが、人々の手のひらに収まっているのです。

しかし、スマホを手にしたことがない先生や、スマホに機種変更してもこれまで通りの電話やメールしかしない先生は、スマホを情報収集のために使いません。子ども達がスマホに夢中という事実は知っているものの、生徒らがスマホで何をしているのかが想像できません。スマホの使用時間と勉強時間を調査し、スマホの使用を控えるよう呼びかける先生もいます。

そんな中で、新聞を毎日読むことを生徒に強要する先生もいらっしゃいます。新聞から情報を得ることが、今の高校生に必要だと説く先生です。僕はこういった種の先生方が新聞を読んでいる姿を実際に見た事がありませんが、その種の先生は力強く生徒に新聞を読むことを習慣づけるようにと言っています。

僕自身は新聞を購読していないので、情報収入源はネットかテレビです。嫁が中日新聞を購読しているので、たまにオンラインで地元記事を見させてもらうことがあります。ただ月に何度かあるほどです。この様な生活を送っている僕は、新聞を手に入れ、気になる記事を切り取り、ノートに貼る作業をやれとは、生徒には勧められません。情報を収集し、自分の意見をアウトプットさせるなら、情報源のURLかスクショと、数行の文字を入力させたらアナログの手間無く済ませられます。

その時間のかけ方は、ねらいと現状に合っているか?

この言葉は、今回紹介した本の帯部分に書かれた言葉です。コストパフォーマンス、略してコスパ、費用対効果とも呼ばれるこの考え方が、今の教育現場には必要だと僕は考えています。

無駄なことでも一生懸命やろうという考え方には、僕はどうしても賛同できません。

この本が、そんなモヤモヤを抱えている先生が、エビデンスを元に教育への力の入れ方を改め、効率良く効果の高い教育に力を入れるきっかけになりますように。