この度は、教師でありながら多数の本を出版されている栗田正行先生本人より、新刊の本をご恵贈いただきました。
学校の先生目線から見た、「お金」がテーマの本です。
素晴らしいテーマだと思います。栗田先生は一度教師という職から退き、他業種の経験を経て再び教師として働いている先生です。著書の中で、その時のお金について苦労した話が端々に見受けられました。その経験がこの1冊になったんだなぁと、読んでいて思いました。
学校の先生は実はお金に詳しくない
学校の先生っていう職業の方は、普通に暮らしていく限り、お金について無頓着な方が多い印象があります。
日本では日中戦争が始まってから、貯蓄を推奨するような運動が組織的に進められました。
「勝つために国民貯蓄」というスローガンの下で、貯金頑張ろうキャンペーンを打ち出し、国民に「貯金はお国のためだ!将来のためだ!」と思い込ませ、政府はそのお金を無担保で借りていました。
戦争に負けてからは、GHQ占領下で日本国憲法を制定し、「教育の義務」「勤労の義務」「納税の義務」を国民の三大義務として教育してきました。これは2020年現在も変わりません。中学校までは教育を受けさせるんだよ。働くことは義務なんです。税金を払いましょう。というのが日本で暮らしていく上での義務なんだよということは、中学を卒業するまでに必ず触れるようになっています。
特に学校の先生を志すような方には僕を除いて真面目な性格の方が大変多く、国のために喜んで働き、きちんと納税をします。
お金の使い方にもその特徴が現れています。特に公務員となると、定年退職するまでにもらえる給料の合計が採用された時点で既に決まっているので、いくら仕事を頑張っても給料は増えません。なので、一生のうちマイホームやマイカー、旅行、育児などでいくら必要なのかを考えつつ、如何に他の娯楽を我慢するのかという思考に辿り着く方がほとんどです。
つまり、公務員、特に学校の先生という職業の方は、お金についての思考が停止している方が非常に多いのです。欲しい物を買いたいのであれば他のことを我慢するという考え方が身体に染みついているわけです。我慢して働けば、年齢とともに給料が上がりますから、こういった思考になるのも当然です。
僕はというと、教師を目指しながらも情報以外の教員免許を取得できず、大学を卒業してから3年間は常勤講師として働いていました。3年目が終わるとした時に来年度は無いと宣告され、他校で非常勤講師として務めることになりました。
常勤講師から非常勤講師に変わったところで前年度の所得で計算された市民税、国民年金、国民健康保険の支払いにかなり苦しめられました。これについては別の記事に書いたので、気になる方はご覧下さい。
当時は実家暮らしではあったものの、自分が稼いだお金がほとんど税金で消えていく虚しさ、何よりお金が無いという焦りと不安でいっぱいいっぱいでした。給料日が来ても「やった、これで○○の支払いが出来る」という感覚が先に来て、欲しい物を買うなんて到底叶いませんでした。
その後は私立高校での非常勤講師を掛け持ちしたり、塾講師としても働くことで、ダブルワークをすることでなんとか収入を取り戻していました。
自分の行動次第で収入を増やしていけたのです。この、収入を増やすことに努力をするという感覚ができたおかげで、思考停止にならずに済んだのではないかと思います。
学校の先生こそマネーリテラシーが必要
前置きが長くなりました。最後は僕自身の話になってしまいましたが、要するにああいうきっかけでも無い限り、学校の先生はお金に対して、金額の大きい小さい増えた減ったという感覚しか実感しないのではないかというのが僕の持論です。
中には家族が会社を経営していたりと、お金を生み出す側に近い環境の方もいらっしゃいますが、多くの先生方は日本という国に雇われた労働者のひとりとして職務に専念しています。そのため、将来いつか欲しい物が出来た時のためにとりあえず貯金という考え方がデフォルトなのです。
そこで今回紹介する『先生でも学べる 「お金」の基本』の出番です。本書では、学校の先生でありながら、公務員だとしても**認められた範囲内でお金を増やしていきませんか?**という資産形成についての基本が紹介されていました。
第1章はファイナンシャル・プランナー編
面白いのが、この本、章が2つしかありません。前半がファイナンシャル・プランナーの方による学校の先生向けの資産形成のお話、後半が栗田先生のご経験による運用のお話がまとめられています。
特に教師という職業においての、年齢や肩書きによって分けられた5つの資産形成プランが結構参考になりました。正直、初任の時に読みたかったですこの本。
- 新卒3年目プラン
- 学年主任プラン
- 主幹教諭プラン
- 副校長プラン
- 校長プラン
学校の先生って、だいたいこのコースで出世していくよねっていう流れがわかります。そしてそれぞれのステージに必要なライフプラン。これが結構参考になります。理想の貯蓄額、大体その辺りの年齢で起こるライフイベントなどが考慮された金額が出ています。
そして、資産運用方法についてもざっくりとまとめてあり、「聞いたことはあるけど、それって一体何なの?」という疑問が解消できます。
株式、債券、投資信託、保険、FX、外貨預金、NISA、iDeCo。学校の先生向けの本で、ここまで網羅した本って、他にあるのかしら。と思うほどです。
第2章は栗田先生編
投資を通した資産形成の基本に触れた後で、栗田先生の過去の経験を交えた運用方法が後半にまとめられていました。
これがねぇ、一言で言うと、僕が実践してきた方法と大体一致していたので**「やっぱそう来ますよねぇ」**状態で楽しく読めました。
ざっくり言うと、知識をインプットし、自分なりの視点も交えて情報発信を行う。機会があったら出版という流れです。ね、完全に一致しました。
この流れが、まさしく現代版自己投資です。お金という価値を、経験という価値に変えるわけです。お金の使い道として娯楽がありますが、少しでも教養や自己啓発に使うことで、人生に対してリターンが生まれるという考え方です。
この方法を「アウトプット型」と定義し、他には**「ライフスタイル型(クレカのポイント活用)」「ディフェンス型(定期預金)」「オフェンス型(投資信託・株式投資)」**と、損をしないことを前提とした運用スタイルを提唱されていました。
基本の次は応用
栗田先生が今回書かれた本は、これまでお金についてあまり考えてこなかった先生向けです。
教科で言うと、公民科や家庭科にも応用できる知識だと思います。僕はアウトプット型投資を主にやってきたことで、今があると実感しています。こうして文章を書いているのも人生の楽しみの一環です。
この記事がアップされる2020年10月9日が本書の発売日です。既にKindle版も購入できるようになっています。お金について基本を抑えておきたいという先生のための1冊です。
少し話は変わりますが、そもそも「お金」って何?という疑問を持ったり、投資について興味を持った方がいましたら、次の1冊としてインベスターZという漫画がおすすめです。株式投資を通して、お金についての理解を深めていく中学生が主人公の漫画です。ドラゴン桜の作者が書いたもので、評価が高いことで有名です。こっちはKindle Unlimited対象になっているので、お試しにどうぞ。